ベスト20選考委員の対話





蟲ふるう夜にの
『第一章 蟲の音』


1.蟲の音
2.クロイトモダチ
3.犬
4.ヒトの音
5.それでも、その手を
6.光軌一閃
7.アヲイトリ
8.明星
9.蟲の音~Reprise~


Vo/蟻
Gt/慎之介
Dr/郁己
Ba/春輝


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第20回 蟲ふるう夜にの『第一章 蟲の音』


A: 今回は蟲ふるう夜にのCD『第一章 蟲の音』です。

B: 世の中にいい意味で裏切られるってことは滅多にないと思ってるんですが、このバンドは本当にいい意味で裏切ってくれました。

A: というのは…。

B: このバンドは3年くらい前から、4~5回観ているんです。最初は「蟲ふるう夜に」っていうバンド名に惹かれたんですが、音の印象は薄かったんですよね。

A: バンド名は強烈ですよね。

B: その後何度か聞く機会があって、いいものを持ってると感じる一方、チグハグさが気になりました。

A: チグハグというのは?

B: 一言で言えば、歌とギターが合っていない。譜割とコードは合っているんだけれども、別の曲を弾いているんじゃないかという感じ。それで以前はCDを買ったこともなかったんです。

A: 最近そういうバンド、多くないですか。オリジナル曲作ってもいっしょに練習する時間がないのか、個人練習だけはしっかりやって、ライブハウスに出たはいいけど、ひとりひとり別の線路を走ってるみたいな。

B: 人の音を聴いて反応する余裕はないから、ひたすら自分の線路を走っちゃう。(笑い)で、結構メカニカルにはうまかったりするから、返って困る。

A: 蟲ふるう夜にも、そういうバンドだったんですか?

B: 個人練習だけやってっていう感じではなかったですけど、もしかすると歌とギター、実は仲が悪かったりするんじゃないかと…。

A: 今回のCD『第一章 蟲の音』に、そんな感じはなかったですね。

B: 夏にワンマンのライブがあって、行ってみたら見違えるようなっていて驚きました。ただ、2曲目の「クロイトモダチ」、あの曲に以前の痕跡が残っているような気がするんですけれどね。

A: ああ、Aメロのところね、何でギターがああして頑張っちゃてるのかとは思ったけど。

B: ギターが頑張った結果が、あとで「そうだったんだ」って納得できる解決を用意していればいいんですが、消化不良ですよね。以前は、あんな感じばっかりだった印象があるんです。ワンマンを観たあとで、急にそんなによくなるはずない、何か見落としていたのかと思ったくらい。それがいい意味で裏切られたということなんです。

A: 基本的にはメタル系のバンドですね。とにかく、全体的として演奏にポジティブなパワーが溢れているというか、いいですね。ボーカルがまた、声が全開で出ていて好感です。

B: ライブを聴いても、以前よりメタル色が強くなったような気がしました。CDでは、1曲めと最後の9曲目が「蟲の音」という語りの曲になっていて、「蟲ふるう夜に」というバンド名を意識した世界観を作ろうしたと思うんですが…。

A: ところで3曲目の「犬」は、ちょっとポップすぎたかも知れないですね。ヘビーな曲のあとではちょっと唐突な感じがします。いきなり歌から入るのじゃなくて、ギターだけの演奏が4小節だけでもあれば、もう少しよかったんじゃないかとは思いました。

B: ただ、そのあとはうまくつないで、それで、ピークが4曲めから6曲めに来ますよね。全9曲ですから、ど真ん中に高峰がそびえているようで、そこはよかったんじゃないかと思います。

A: 4曲めの「ヒトの音」は語りと歌の中間のAメロのあと、経過部があって、そのあとにサビがあります。経過部のおかげと思うんですが、「闇夜に光」って歌詞のところの盛り上がりは素晴らしい。

B: 「闇夜に光~」のところは本当に感動しますよね。そしてそのまま流れを切らさず、「それでも、その手を」という静かな曲が入り、再びヘビーな「光輝一閃」で締めくくる構成です。この3曲の密度と一体感はすごい!

A: 組曲というか、ほとんどひとつの曲のように聴けますね。いちばんいいのは、「ヒトの音」でしょうか。曲中曲のような形で静かな部分があるという結構凝ったつくりになってますが、作為を感じさせず、自然に聴けます。

B: 以前の曲に「青の中の一つ」というのがあって、それがやはりしゃべりと歌の中間のようなボーカルなんですが、蟲ふるう夜にがいいバンドになるとしたら、ここら辺を伸ばすのがいちばんか、とは思ってたんです。

A: 逆に「アヲイトリ」は結構秀曲と思うんだけど、置き場所でイマイチ損をしている気がします。

B: ところで、曲によってはクサイ・ジャパニーズロックになりそうでいて、ひとつ手前で踏みとどまったっていう感じもするけど、どうですか?

A: ちょっとあぶないところはありますね。(笑い) でも、ひとを感動させるには、クサクなることも恐れちゃいけない。ただし、ほんとうにクサクなったらダメなんですよ。

B: いろいろ注文はあるにしても、9曲通してパワー感が落ちた感じがないのは立派と思っています。ベスト20入りどうでしょうか。

A: 異議ありません。もしも「ヒトの音」「それでも、その手を」「光輝一閃」のレベルで全体を構成できたら、間違いなく世界最高水準のアルバムだったと思います。第一章ということなので、第二章に期待しています!



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